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ストーリー紹介 | 木村結衣

Donnary21st_BHVR
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edited January 2022 in ニュース

その古風な育ち方に反し、木村結衣は生まれ育った飛騨の町でスクーターのレースに興じた。

地元では不可能と言われることをたやすくやってのけると評判の彼女だったが、そんなことは男のやることだと信じる父親は、娘をスクーターから遠ざけようと手を尽くした。ところが、結衣の祖母が祖父の機械工マニュアルと、車やバイクのエンジンに関する覚書きをこっそり手渡していたのだ。結衣は祖父のマニュアルを読み、すぐにそれを習得した。

スクーターのメンテナンスができるようになっただけではなく、エンジンに改良を加えてモトクロスに乗っている年上の少年たちと競争するようになった。

祖父の「ゲン担ぎのハチマキ」を腕に巻き、彼女は地元の少年たちとレースをした。結衣に追いつけない少年たちは結束して彼女を負かそうとしたが、運は彼らに味方しなかった。結衣は毎回彼らの裏をかき、友人たちには大評判になった。

進学の時期になると、結衣は勇気を振り絞って自分のバイクレースへの夢を父親に打ち明けた。話し合いに話し合いを重ね、結衣が通常の進学を拒否すると、そのことを恥じた父は、家から出ていくよう彼女に告げた。祖母から応援と貯金をもらった結衣は、重い気持ちで名古屋へと向かった。

名古屋は思っていたような場所ではなかった。下級の事務職やホステスのような二流の仕事しか見つからない。祖母からもらったお金が底をつきそうになると、結衣はそれでレース用バイクを購入し、違法なストリートレースに参加した。するとその結果、彼女は見たこともないような金額を稼ぎ出した。

その大胆さと反射神経の噂はあっという間に広まり、ほどなくして結衣は非公式で女性だけのバイク乗りチームを作った。メンバーは、結衣のテーマカラーであるピンクの服を着ている。

彼女の後をついて走るその一団とは別に、闇に紛れて自分の後を追うストーカーがいることに結衣は気づいていた。アパートの部屋から幸運のハンカチが盗まれたと気づいたとき、彼女は警察に相談した。だが警察は、そのストーカーはきっといい男だ、そいつと近い将来結婚するかもしれないぞと言い放ち、笑って彼女を追い返した。

ある夜、結衣がアパートに戻ってくると、ストーカーが彼女の私物を物色しているのを目撃した。男は彼女に気づいてはいない。どうしたらいいかわからなかった。しかし、ストーカーの手が彼女の服に伸びるのを目にしたとき、彼女の我慢は限界に達した。結衣はストーカーに向かって出ていけと叫んだ。ストーカーはナイフを構えて彼女のほうを振り向き、こちらに向かって突進してきた。彼女がその攻撃をかわすと、男は壁にぶつかってナイフを落とした。躊躇することなく結衣は男にタックルした。床に転がりながら、双方とも必死の攻防が繰り広げられた。結衣は白川でのスクーターレースの時よりももっとひどく打たれた。アドレナリンが上昇し、彼女の力がストーカーのそれを上回る。彼女はナイフを床から拾い上げるとその鋭利な刃を男の喉元に突き付けた。

アパートに到着した警察が男を連行していき、傷の手当のために結衣を急いで病院へと連れて行った。レントゲンの結果、腕と足に複数の骨折が見つかった。ほどなくして彼女のチームが一人、また一人と姿を見せ、皆で出し合って治療代を工面した。リハビリは辛かったが、結衣は決してあきらめず、チームの支えもあってレースに出る準備は整った。

事件があってから初めてのレースで、チームの皆が新しいピンクのハチマキをプレゼントしてくれた。それには、皆のサインと応援メッセージが一面に書かれていた。結衣は誓った。自分の賞金と影響力で他の女性たちを助けると。その言葉どおり、チームが「サクラ7」として有名になると、メンバーはピンクのハチマキを身に着けた。そのハチマキは、ストーカーや虐待の被害を受け、助けが必要な女性たちに対する、団結と支援の象徴だった。

サクラ7のメンバーは7人以上に増え、結衣のテーマカラーであるピンクは女性のエンパワーメントの代名詞となった。ストリートレースでは、女性たちが彼女をサポートしようと大勢で列をなし、7連勝した際には、スポンサーの注目を集めることになった。彼女が成し遂げたのは全日本ロードレース選手権への出場だけではない。結衣は、一流の大会に参加し、勝利を収めた最も若い女性となったのだ。

まもなくスポンサーの数もチームのメンバーも3倍に増えた。ところが、すべては違法なストリートレースTK3(Tokyo Kick 3000)で停止してしまう。レースで先頭を走っていた結衣は、どこからともなく現れた不気味な霧の中に入ってしまった。戸惑い、混乱した彼女はバイクを止めて降りた。その場所が東京ではないという事に気づくまで、時間はかからなかった。  


では、霧の森でお会いしましょう。

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